研究概要 |
最近,米タンパク質の大量調製が可能となり,これまでにアルカリ処理とデンプン分解酵素処理によって,米タンパク質のIn vivo 消化性の相違や,生体内での米タンパク質利用効率の差異を動物試験で明らかにしてきた.アルカリ処理米タンパク質は,消化・吸収性や体内利用効率に優れているので,新しい植物性タンパク質素材として,食品産業界での活用が期待される.しかし,主食として食べ続けてきた米タンパク質の栄養生理機能については,大豆タンパク質と同様な脂質代謝改善作用があることを明らかにしたが,他の生理機能については未知の点が多い.そこで,コシヒカリと春陽由来米タンパク質(アルカリ処理調製)をヒト健常成人のモデルとして成熟期ラット,生活習慣病のモデルとして非肥満型自然発症2型糖尿病モデルラットに摂取させて,糖代謝調節機構への影響について,まずインスリン応答や糖代謝に関連する血液マーカー,貯蔵脂肪量等について測定し検討した. 1,米タンパク質摂取が成熟期ラットの糖代謝に与える影響 20週齢Wistar系雄ラットを予備飼育後,3週間の栄養試験を実施した結果,対照のカゼイン群に比べて腎臓・副睾丸周囲の貯蔵脂肪量,血漿総・HDLコレステロール,トリグリセリドともに有意に低値であった(p<0.05).18hr絶食後血糖値は少し低くなる傾向がみられ,血漿インスリン濃度はカゼイン群に比し有意に低かった(p<0.05).これより,米タンパク質の摂取は基底インスリン濃度を下げ,インスリン感受性を高めることが示唆された. 2.2型糖尿病モデルラット(GKラット)における2種類の米タンパク質摂取の影響 7週齢雄GKラットに米タンパク質(コシヒカリと春陽由来)を2週間摂取させた後の絶食後血糖値はカゼイン群に比し,特に春陽由来の米タンパク質で低く,血漿インスリン濃度も低下した.さらに試験期間を10週間とし,測定項目を増やして糖代謝調節の差異について検討を継続している.
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