研究概要 |
高齢社会の進行は、農業においては農業従事者の高齢化、農業労働における女性就労者の増加という問題を引き起こしており、このような高齢農業従事者の疲労とその軽減対策は農村保健における重要な研究課題となっている。本研究においては、これまで実施してきた農業従事を対象とした研究結果を踏まえ、高齢農業従事者の健康を規定する生活環境要因について、食生活を含む生活習慣と疾病との関連、食習慣と高齢者の健康の問題、農作業負担と健康状態、農作業による身体的疲労の原因と考えられる作業負担等の調査結果について総合的解析を進め、農作業による疲労問題を生活構造全体の中で捉え、高齢農業従事者の疲労軽減、さらに健康の維持増進を最終目標とする生活環境、食生活改善のための行動支援のあり方を明らかにすることを目的とする。 19年度は、高齢女性農業従事者の疲労と食事摂取状況との関連について、疲労アンケート調査および食物摂取頻度調査法(BDHQ)による食事調査を行い、疾病の有無別に対象者を解折した。解析結果については、アジア農村医学会(The 11th Asian Congress of Agricultural Medicine and Rural Health, Aurangabad, India, 2.2008)において「Fatigue among Female Agricultural Workers Associated with Their Health Conditions」の発表を行った。調査対象者の約半数は高血圧等の生活習慣病関連による通院・服薬を行っている実態があり、健康状況が働き方に影響を及ぼしていることが示唆され、疲労調査票の汎用性さらに栄養素等摂取状況の結果も合わせた総合的解析の意義を示すことができた。農作業負担と健康状態、疲労に及ぼす食事摂取状況の影響について総合的に評価するために、農作業負荷時におけるエネルギー代謝測定,心拍数および血糖・乳酸値測定のための実験モデルを検討し、実験方法の修正を行った。また、研究活動推進に関連のある研修会へ参加・研修し、課題達成の一助とした。
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