大豆タンパク質βコングリシニン(β-con)および中鎖脂肪酸を含む食用油(MLCT)は脂質濃度や体脂肪の蓄積に改善効果が期待される機能性食品素材である。類似の効果を有する機能性成分の併用摂取は、より一層の効果が期待される。今回我々は、β-conとMLCTの併用摂取によるマウス血清、肝臓脂質濃度、脂質代謝関連遺伝子発現および体脂肪蓄積への影響を検討した。7週齢雄C57BL/6マウスにタンパク質源として重量比20%のカゼイン+β-con(15%カゼイン+5%β-con)混合物およびエネルギー比30%のMLCTを組み合わせた食餌を40日間摂取させた。コントロール群はカゼインと高オレイン酸紅花油を組み合わせた食餌を与えた。一夜絶食後、二重エネルギーX線吸収法(DEXA)により体脂肪率を計測し、屠殺後、血液と肝臓を採取した。肝臓より総RNAを抽出し、real-time PCRを用いてACO、CPT-1、GPAT、CYP7a1などの脂質代謝関連遺伝子の発現量を調べた。血液、肝臓脂質濃度は市販酵素試薬により分析した。食事因子の影響は二元配置分散分析を用いて解析した。その結果、全ての測定項目において食餌因子による交互作用は認められなかったが、食事摂取量、血清コレステロール、中性脂肪濃度および肝臓コレステロール濃度に油脂の影響が認められた。MLCT摂取に伴い中鎖脂肪酸が利用されるが、中性脂肪濃度改善に寄与しなかった。MLCTの摂取は、血清および肝臓中のコレステロール濃度の低下を示した。油脂の影響が脂質代謝関連酵素遺伝子の発現量にも影響するが、これら遺伝子の発現亢進が必ずしも脂質濃度の低下と関連しなかった。β-conの顕著な影響は認められなかった。これらの結果より、β-conとMLCTの併用摂取による顕著な相加相乗効果は認められなかったが、遺伝子レベルでのβ酸化亢進やコレステロール異化の亢進など各機能性食品素材の有用性に関する生体内での応答性や組み合わせ方による効果的な利用法の可能性が示唆された。
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