本研究の目的は、大学(院)における職業倫理教育のあり方を教育プログラムとコンテンツの両面から調査・研究し、新たな職業倫理教育のあり方を具体的に提言することである。 最終年度である本年度は、第一に、1期15回分の授業資料を作成し、本学大学院共通授業科目「応用倫理(企業倫理・組織倫理)」において実際に活用した。これには、PPTファイルの講義資料の他、講読用文献資料・意思決定分析シート等が含まれ、倫理学の基礎理論から企業倫理の主要課題に関する諸理論と基礎文献、組織における意思決定理論とその適用、失敗事例に関するケース・スタディーなど、多様な教育手法と資料が含まれており、大学院における職業倫理教育のためのモデル・プログラムとして開発したものである。この教育プログラムの根底にある理念については、研究代表者が論文「世界市民としての専門職業入」において解明した。 第二に、札幌圏の企業・組織(銀行・鉄道・放送局・電力・ガス・官庁)に対して、コンプライアンス体制や企業倫理研修体制に関するヒアリングを行い、その実態を調査するとともに、大学における職業倫理教育に対する要望などを聴取した。 第三に、研究分担者および研究協力者を海外の学会に派遣し、それぞれ軍事倫理および報道倫理に関する研究発表を行わせるとともに、海外の関連研究の動向に関する調査を行った。こうした個別的な専門職倫理を職業倫理教育プログラムに組み込むことは、今後の重要な課題である。
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