研究概要 |
本研究の目的は,現在一般に普及しているデジタルカメラ(以下 デジカメと略記)を計測機器(検出器)として転用することの有効性を示すことにより,学校教育等における科学実験・観察の質の改善や新たな展開に資することである.平成19年度は3年計画の初年度に当たる.申請した研究計画に従い具体的に挙げた研究課題のうち,「課題(1)天然水中の微量金属イオンの定量」ついて取り組んだ.研究の概要および成果は以下のとおりである. 身近な対象である河川水中の鉄イオンの分析を取り上げた.一般的な河川水中の鉄イオン濃度はppbレベルと低濃度である.本研究では,デジカメ測定の特長である測定の柔軟性を活かして高感度化を図った.すなわち,細長いガラス容器に測定溶液を入れ,光路長を大幅に長くした.このセルによる測定条件(セルの配置,光源等)を種々検討し,最適条件を定めた.反応系は,鉄-フェナントロリン系と鉄-バソフェナントロリン系について検討した.どちらの反応系においても100ppbまでの範囲内で良好な検量線を得ることができた. 本法を河川水中の鉄イオンの分析に適用した結果,数十ppbの鉄を再現性よく測定することができた.添加試験の結果も良好であった.本研究により安価なデジカメを検出器として用いて,通常の分光光度法では測定が難しい濃度範囲の天然水中の微量鉄の定量でも,簡便な操作で行うことが可能になった.これはデジカメ測定の特長である測定の柔軟性を活かした成果であり,デジカメを検出器として用いる有用性を示す代表的な一例を確立した.
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