研究概要 |
中学校理科の中でも際立って生徒の理解度が低いと思われる「力と運度」単元について,授業改善の方策を探るための以下のような研究を行った。 1.中学生の「力」という語に関する考え方,および,慣性の法則に関する理解度を調査した。対象は栃木県内の中学生及び高校生660名である。その結果,中高生は力に関する学習後においても科学的な「力」と日常生活で用いる「力」の違いを区別できないこと,慣性の法則を正しく理解している生徒は10%以下であることが明らかになった。 2.上記の結果を受けて,中学生の「力」に関する概念形成を支援するための授業を計画し,実行した。授業改善のポイントは,1)「力とは押したり引いたりすることである」と定義することにより,物体は力を持たない,力は物体を押している間だけ働く,などの理解の定着を図った,2)力学台車を同じ力で引き続ける実験を行い,力が働いている場合は物体は加速することを体験的に学ばせる工夫をした,3)力を矢印で表す方法の指導において,作用点を強調した,などである。その結果,上記のような授業改善の方策は,生徒の力についての概念的理解を促進し,学習した内容は長期にわたって保存されるなど,十分な有効性を持つことが分かった。 3.上記のような授業改善策により,生徒の力に関する理解は有意に向上したが,それでも正しく理解できる生徒の割合は50%に満たず十分とはいえない。その原因の一つは実際に力を見ることができないことであると考えられる。そこで,力を視覚化するための教材「力表示器」の開発を試みた。加速度センサーとPICを用い,物体に働く力をLEDの点燈によって示そうというものである。力表示器は試作品がほぼ完成したので,平成20年度はこれを用いた授業を立案・実施し,その有効性を検討していく予定である。
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