身近でありながら定式化が困難な、不均一場に関わる現象は、目には見えない「場」やそれにより伝わる「力」の概念を考えさせるのに都合良い。強い効果が局所に集中することで、問題にする現象を対象化しやすくし、また、その概念を扱う意義も理解しやすいからである。しかし、その説明を、高校や大学初等で扱う物理学につなげるためには、基礎的な式や単純な図との関連を理解させなければならない。本研究では電場・磁場・応力場を対象として、シミュレーションと測定を行うことによってデータ化し、理解を与える資料を制作することを目指した。電場の測定については、比較的知られた基礎実験の中に 2次元電流場の測定実験があり、それに放電現象を起こしやすい「突起」のある形状を導入し、放電の起こる部位やその理由を考察させることのできる教材資料を作成することができた。磁場測定はホール素子、応力場測定は光弾性効果を用いる測定システムを作成した。これらの測定の中では唯一、磁場測定が3次元に分布する3成分の場が実測可能であり、不均一な場を使った遊具が力学的に興味深い運動を示すことで知られている。そのような遊具について個々の原理を説明するには精密な分布測定が必要と考え、磁場測定は高い位置分解能をもつ測定システムとした。不均一場に由来する興味深い現象の説明を定量的に行いそれを理解してもらうことは、必ずしもすべての場合に容易ではないが、経験に基づいて日常的に行っている行為が物理学の概念と結びつき、理由付けられることは学習上大きな効果があり、多くの例を通して納得してもらうことができるよう、測定とシミュレーションによる教材資料の研究開発を行った。
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