研究課題
本研究は、送信点と異なる場所に多数の受信点を配置し、流星が流れたときその飛跡に沿って生じるプラズマに反射した電波(以下流星エコーと呼ぶ)を、多地点で受信してその到達時間差より流星の飛跡を求め、超高層大気でおこるプラズマ現象を身近に感じることができるフィールドワーク用教材の開発を目的としている。本年度は受信アンテナを設計・製作し、受信機・3KHzサンプリングアナログディジタルコンバータを整備し、さらに各受信点の時刻を一致させるためのGPS受信機を作製した。これらの受信セットよりデータを取得するソフトと三次元ベクトルと速度を求める解析ソフトの開発を行い観測に望んだ。長野県から発射されている2つの周波数の電波を東京近郊の6箇所で受信し、さらに福井県から発射されている電波もその中の3箇所で受信し、実効15地点の観測網を実現した。観測は2007年7月下旬から8月上旬のみずがめ座δ流星群を目標に観測を行い、実効12点の観測点で同じ流星からの反射エコーが捉えられ、その到達時間差より流星の三次元ベクトルと速度が求められた。このような方法で求められたのは世界で初めてである。大規模な施設を使わず、安価で携帯性に優れた教材が完成した。この求められた流星を光学的に同定する観測システムも構築したが、流星の明るさや天候の問題で捉えられた流星を特定するまでには至らなかった。その後パルスを送信している電波を用い流星までの距離を求める方法を新たに着想し、そのデータ取得のため新たに広帯域受信機と200KHzサンプリングアナログディジタルコンバータの設計・試作とデータ収集ソフトの開発を行った。その結果、2008年12月のふたご座流星群での観測で、距離データの取得に成功した。このデータを上記の時間差によるデータと組み合わせれば、より精度の高い流星飛跡を求めることが可能となり、現在取得した距離データの評価を行っている。開発した教材のうち3KHzサンプリングのものは、東京大学教養学部の実習授業と理学部地球物理学科の実習授業に取り上げられ、有効に教育的効果を発揮した。また、千葉大工学部や兵庫県の高校教諭に対し、この教材の普及活動を行った。その結果、千葉大では本研究のための観測点を提供して頂き、兵庫県では高校間でこの観測を行う試みがなされた。上記の成果は、関連する研究会で発表を行った。
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平成19年度実験・実習技術研究会報告集
ページ: 257-260