研究課題
本研究は、送信点と異なる場所に多数の受信点を配置し(多地点観測法)、流星が流れたときその飛跡に沿って生じるプラズマに反射した電波(以下流星エコーと呼ぶ)を、多地点で受信してその到達時間差より流星の飛跡を求め、超高層大気でおこるプラズマ現象を身近に感じることができるフィールドワーク用教材の開発を目的としている。本年度は昨年度問題となった、各観測点の時刻をより正確に一致させるため、GPSからの時刻信号とPCのハードから発生させるタイマー信号を用い、より正確で安定した時刻記録用のソフトの開発に取り組み、さらに使用する周波数を4波、受信地点も8カ所に増やし観測に望んだ。長野県から発射されている3つの周波数の電波を東京近郊の8箇所で受信し、さらに福井県から発射されている電波もその中の3箇所で受信し、実効27地点の観測網を実現した。観測は2008年7月下旬から8月上旬のみずがめ座δ流星群を目標に観測を行い、実効22地点の観測点で同じ流星からの反射エコーが捉えられ、その到達時間差より流星の三次元ベクトルと速度が求められた。この結果、昨年度より遙かに精度の良い流星飛跡を求めることに成功した。この求められた流星を光学的に同定する観測システムも構築したが、捉えられた流星を特定するまでには至らなかった。しかしこのことより光学観測では捉えられず、電波観測ではアンダーディンスエコーであることより、約6等星クラスの流星を捉えていることがわかった。一方で、この方法が正しいかどうかを証明するため、京都大学のMUレーダーを用い、流星体自身が発生する微弱なプラズマからのエコー(ヘッドエコー)を観測し、正確な飛跡を求めることを試みた。そのため干渉計の補正法の検討を行い、補正ソフトを開発し、2008年10月のしし座流星群、12月のふたご座流星群、2009年1月のしぶんぎ流星群で観測を試み、ヘッドエコーの検出に成功した。今後はこの方法と多地点観測方法の比較を行う予定である。開発した教材のうち3KHzサンプリングのものは、東京大学教養学部の実習授業に取り上げられ、有効に教育的効果を発揮した。また、東海大学理学部や甲南大学にこの教材の普及活動を行った。また、国民向け(とりわけ若年層)には福島県鮫川村立鹿角平天文台の一般公開日に実演し、訪台者の関心を惹いた。上記の成果は、関連する学会・研究会で発表を行った。また他の分野への応用例として、宇宙線観測へ応用した例を発表した。
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京都大学総合技術研究会報告集 第II分冊
ページ: 280-281
平成20年度機器・分析技術研究会報告集
ページ: 52