本研究では、職人の技能は、身体の外に用意する道具や環境の中に知識や技術として込められており、多くの工夫や知恵をその中から学び取ることができるという「外在主義的な知識観」から技能継承の方法を提案する。このことにより、わが国の伝統工芸モノ作りの世界における効果的な継承・教育方法を目指すものである。 そのために、さまざまな事例調査による技能の抽出と知識の分かりやすい可視化、それを共有できる作業環境・教育環境の構築へと研究を進める。 平成19年度の研究では、優れた技能を持つ作家や職人とその活動の場である工房を調査し、「技能を抽出し、知識として表現する」ことを軸に研究を進めた。調査は、建具工房、指物工房、家具工房、ガラス工芸工房、旋盤工場、木型工場、株式会社デンソーを対象とし、熟練者の道具や作業環境の工夫、そして作業過程を調査した。工芸作家や職人の技能の高さは、経験的熟練として身についた動きだけでなく、身体の外に用意した道具や環境の中に多くを見出し、次年度にむけた情報資料とすることが出来た。特に、作業過程では適切な加工を行なうために、独自のジグや固定具に職人の知識が込められていた。事例のひとつとして、指物師のジグと組み手見本を合わせて収集しその効果を検証した。その結果、ジグなどの標準化の必要性が明らかとなった。 次年度は、この成果を基に標準化の検討を加え、我が国の伝統工芸モノづくりの世界における効果的な継承・教育方法への応用、特にジグや作業環境の設計に焦点を当ててさらなる研究を進める。
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