本研究では、職人の技能は、身体の外に用意する道具や環境の中に知識や技術として込められており、多くの工夫や知恵をその中から学び取ることができるという「外在主義的な知識観」から技能継承の方法を提案する。このことにより、わが国の伝統工芸モノ作りの世界における効果的な継承・教育方法を目指すものである。そのために、さまざまな事例調査による技能の抽出と知識の分かりやすい可視化、それを共有できる作業環境・教育環境の構築へと進めてきた。 本年度は、初年度に引き続き、技能の抽出と知識の分かりやすい可視化、それを共有できる作業環境・教育環境の構築のために、国内の工房や博物館、スウェーデンの福祉施設、病院、芸術系大学教育環境を調査した。こうした調査を踏まえ、研究代表者の大学内において、指物見本棚などを利用し、可視化物を教える側、学ぶ側が共有できる知識として、実際の教育環境を整備し配置した。さらに、それらを利用する課題を設定し、その効果と重要性について学生アンケートにより評価した。また、収集したジグや模型などを環境に配置することによりどのような変化があるのか、同じ課題を熟練した教員(小松研治)と数年の経験者、および2年程度の経験者を比較し、なにが違うのかを測り検証・評価する準備を整えた。 なお、さまざまな情報や知識が人の動きや環境に残され刻まれた痕跡にあるとし、痕跡学研究会を立ち上げ、公開するための準備を始めている。
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