本研究は、理科授業における教師と子どもの発話内容と子どものワークシートへの記述内容を、自己組織化マップで表現するソフトの開発とそれを用いた分析法を明らかにすることを目的としている。本年度は、Excelによる自己組織化マップ作成ソフトについて試供版を配布し、使用法の修正を行うとともに、計算スピードの向上と大量データの処理が可能なように改善を行った。理科授業については、新たに小学校で3つの授業、中学校で2つの授業を収録した。教師と子どもの発話についてデータ化すとともに、ワークシートを用いた授業については子どもの記述内容をデータ化し、自己組織化マップを作成した。自己組織化マップについては、それをもとに頻度の多い単語の関連を簡易に表現した簡易マップを作成し、単語の関連をわかりやすくした。今回分析した結果からは、理科授業についてたとえば次の点が考察された。 ・実験結果のまとめについての教師の発話がほとんどない場合でも、子どものワークシートには科学的根拠をもとにまとめが書かれている。これは「書いてもらう、言ってもらう」といった教師の発話が多く、これにより子どもの交流がうまくいったためと思われる。 ・授業の中には、まとめの発表と考えることとの結びつきが弱く、実験が作業的になり子どもの思考の深まりと実験が結びついていない授業が見られる。 ・授業の中には、科学的な分析方法の学びが中心になり、具体的な現象がどうであったかといった結果とのつながりが弱くなっている授業が見られる。 以上のように、自己組織化マップによる分析により授業改善についての示唆が得られることが明らかになった。また、簡易マップの表現により解釈が容易になった。 次年度においては、自己組織化マップの活用マニュアルを作成し、ソフトを配布するとともに、分析例から分析方法と理科授業の改善についてまとめる予定である。
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