本研究は、子どもの科学的表現力の育成の観点から、理科授業における教師の発話と子どもの記述内容を評価する方法について明らかにすることを目的とした。その方法として、自己組織化マップに着目し、Excelによって自己組織化マップを作成できるソフトの開発を行った。開発したソフトを用いて本研究において収録した小・中学校の11の理科授業、および児童・生徒のワークシートへの記述内容を分析した。その結果、次のことが明らかになり、本研究の分析方法が子どもの科学的な表現能力の評価や授業分析に有効であることが明らかになった。 ・科学的な表現活動が行われている授業には、科学的根拠を直接求めるような授業だけでなく、科学的な表現や考えを促したり、科学的な表現の観点に着目させたりする授業があげられた。とくにこれらの授業においては、学習者のワークシートの記述も科学的な表現ができているとともに、予測の根拠や根拠にもとづいた実験の考察についての記述がみられた。 ・科学的な表現活動にかかわる教師の発話がみられない授業は、実験結果にもとづいた考察の場面で、科学的な根拠が不明確である授業が多くみられた。そのほか、実験の方法を考案するにあたって根拠が不明確な授業、実験結果の表現法の科学的根拠が不明確な授業、考えの交流において科学的根拠が不明確な授業があげられた。これらについての学習者のワークシートの記述内容は、科学的な表現の観点からは十分な表現が行われていなかった。 以上の開発したソフトおよびその使用方法、収録した11の授業ビデオ、授業の発話記録などは、紙面による報告書とともにDVD化を行い、理科教育研究者や理科関係の教師に配布を行った。
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