研究概要 |
1、平成20年度検討した各教科の科学的概念の特質をふまえながら、それと教育課程改革との関連を、特にフランスの普通教育における主知主義の学力概念との関係に注目して、比較教育として分析した。その結果、主知主義の学力概念に関して、初等教育では統合と総合、コレージュでは分化、リセでは専門化が特質であることがわかった。 2、1、の分析のため、フランス人研究者との意見交換と資料収集を行うと同時に、フランスの独自性の比較分析のために、フランスの科学技術教育に影響を与えたアメリカ(PISA, Pre-engineering教育等)、カナダ、EU(PISA,フィンランドLUMAプログラム等)の研究者と意見交換や資料収集を行った。アメリカ(Pre-engineering教育は専門化、カナダは総合、EU(フィンランドLUMAプログラム)は総合が特徴であった。しかし、このPISAの学力(リテラシー)の科学的概念と日本の学力とは異質であることがわかった。また、PISAでは「科学的概念」と「生活概念」との関連が重視されており、日本の学力のように、関連より区別を重視する傾向とは異なることがわかった。フランスの科学技術教育における統合・総合・分化・専門化、アメリカのPre-engineering教育の専門化、カナダの総合、フィンランドLUMAプログラムの総合は、それぞれの科学認識論に基づく科学的概念における区別と関連の問題構造であり、日本的な問題構造と異質であった。 3、フランスの小学校における「世界の発見」科や「科学・技術」科にみられる多元的な各教科の「総合化」の相互関連性と、中学校におけるそれらの教科の科学的な客観的知識の系統性に基づいた「分化」の独自性を、2、日本との比較によって分析した。その結果、日本は科学的概念と学力概念との関係の議論が、総合と分化ではあまり議論されない傾向があることがわかった。
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