1. フランスの「学力低下論」と「教科の再構築」、そして「各教科の構造の問い直し」論議との関係の特質を明らかにした。その結果、フランスでは、科学教育と技術教育を「統合」した1985年の「科学・技術」科は、科学的な「系統的知識を重視」して新設され、それまでの生活経験的な教科の「めざまし活動」が「学力低下」の原因とされ再分化されたものである上に、旧来の科学教育に新たに現代的な技術教育を統合した科学技術教育に関する再構築教科であること、また1995年の「世界の発見」科が、科学教育と技術教育の各教科を「総合化」した日本の生活科にあたる教科であるなど、学力論との関係で、科学技術教育各教科の総合化と分化の論理との関連が典型的にみてとれた。 2. 日本の科学技術教育各教科の学力論やカリキュラムを分析し、1. と比較した。その結果、日本の生活科・理科・技術科にあたる科学技術教育各教科の総合化と分化の論理との関連は、各教科が背景科学に依拠したそれぞれの系統性に閉じこめられ、学力論から各教科の相互関連性を追求する視点が希薄であることが明らかになった。 3. 最後に、科学リテラシーの育成の限界を乗り越えるための現代的な技術リテラシーの育成を新たに目的に含めた学力と、今後の日本の小・中・高を一貫した科学技術教育のカリキュラムの展望をまとめた。特に、日本の「若者の工学部離れ」対策が成功しているフランスの「エンジニア科学Sciencesdel' ingenieur」科のような高校段階の普通教育としての科学・技術教育のカリキュラムは専門化が特徴であり、日本の高校の情報科のカリキュラム開発は、数学と科学各教科を関連させ、科学・技術教育として専門化することも考えた。
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