平成19年度には、疑似科学信奉と批判的思考のありかたについて、当初研究計画に従い(1)質問紙法による疑似科学・超常信奉態度尺度と他の関連指標との間の相関的検討(2)実験的手法による潜在的ステレオタイプの検討、の二つのアプローチから研究を進めてきた。 (1)の質問紙尺度データの分析については、長野県下の高校生および大学生合計950名から継続的に収集している質問紙データに関する多変量解析を進め、疑似科学信奉と超常信奉や科学観との関連、および「あいまいさに対する寛容性(ambiguity tolerance)」傾向と超常信奉の関連性を検討した。また、来年度からの大規模な調査を実施するために、東京都下の高校・中学との間で研究計画の調整を行い、これにもとづいて質問尺度の改良を行った。 (2)疑似科学に対する潜在的ステレオタイプを実験的に検討のために、PC版IAT(潜在連合テスト)を用いた血液型ステレオタイプの検出実験を試行的に行った。被験者数や条件設定が不十分であり、年度内には血液型や信奉度による明確な差異を見いだすことはできなかったが、今後の実験的検討のための基礎データを得た。また、自由記述データから潜在的な態度構造を検出するテキストマイニングの手法を用いて、疑似科学やオカルトマニアを含む「おたく」的態度の調査を、全国5大学の大学生503名を対象として行った。分析の結果、疑似科学に関する一定の傾向性を見いだすことはできなかったが、ステレオタイプ的な態度構造を抽出することができた。この結果は、平成19年9月の日本社会学会第48回大会において報告を行った。
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