研究概要 |
本年度の前半は,調査問題を検討するための予備的研究として,数学的問題解決研究や一連の本研究でも採用されてきた「電話線問題」を再検討することから研究に着手した。そこでは,ふり返り活動を助長し得る問題の一般的特性(解決者の問題解決のレベルに鑑みて多様な解法を導き得るか否か)について検討し,当該問題がそうした条件を満たすか否か,また,ふり返り活動を助長し得るか否かについて検討した。さらには,過去の実験における生徒の解法データを類型化し,それらを「解法の進展」にかかわる観点から序列化した。そこでは,解法の一般性(一般化可能性)、方法への思考対象の移行、素朴な系統的数え上げからの脱却、系統性の有無,という比較的一般性のある基準で序列化できたため,本研究の調査問題を開発する際に参考にすべき基準とすることにした。これらの一連の議論は,裏面「雑誌論文」の論文として発表した。 上記の成果を踏まえ,文献調査等により,調査問題の選定を行った。調査問題は,問題解決に関わる先行研究,問題解決的な指導実践,過去に行った調査問題を参考にしたが,結果的には,過去の調査問題である「じゃんけん問題」を調査問題の第一候補にした。そこで,本年度後半は,「じゃんけん問題」を用いて実施した調査データを精査、検討し,実験群におけるふり返り活動の特徴を抽出すると共に,今後の調査で検討すべき幾つかの仮説生成的な議論を行った。例えば,「誤った問題理解や表象の訂正の困難性」「ふり返りを行わない場合の素朴な解法の維持の傾向」「ふり返りの機能を意識した発問の一般的有効性」などがそれであり,こうした成果は,教授、学習への示唆も含める形で論文にし,雑誌に投稿した。また,インタビュー調査用に,「じゃんけん問題」のインタビュー、スクリプトの検討も行った。
|