研究概要 |
本年度は,まず,「じゃんけん問題」のためのインタビュー・スクリプトを再検討することから研究に着手した。そこでは,昨年度検討したインタビュー・スクリプトを,より多様なふり返りの活動を喚起する発問(処遇)を盛り込むことが出来るように拡張した。 本年度後半は,そうしたインタビュー・スクリプトを用い,愛知と福岡の両地区で,大学生15人を対象にして,「じゃんけん問題」におけるふり返り活動の実態をインタビューで調査した(ただし,ここでの「じゃんけん問題」は,1問目が3人で,2問目が5人でじゃんけんをする際,それぞれ1回のじゃんけんで特定の1人が勝つ確率を求めさせる問題場面であり,2問の間に多様なふり返り活動を喚起する発問をして,解決活動の進展等の実態を探ることが目的となっている)。 このインタビューのビデオデータは,コンピュータで閲覧可能なように電子化され,互いに共有され,順次,分析の対象にされている。またそれらは,現在も分析の途上にあるが,興味深いデータに関しては共同で議論の対象にされており,ふり返りの指導に対して示唆を与えると思われる幾つかの暫定的な知見も得られている。 そうした知見の1つは,ふり返りの機能を意識した発問により,その機能に対応する,例えば,より一般的な問題にも対処できるような解法を1問目の自身の解答をふり返ることから創出することは,かなり難しいのではないかという点である。これは,望ましいふり返り活動の困難さを改めて指摘するものではあるが,より積極的な指導を介在させる必要性を訴えるものでもあり,一連のデータのより詳細な分析を通じて,次年度で望ましいふり返り活動を喚起するような指導のあり方を検討する際のデータとなり得ることが期待されている所である。
|