研究概要 |
本年度は,まず,昨年度行った「じゃんけん問題」を用いたインタビュー調査のビデオデータのうち,まだ分析にかけられていなかったものについて分析を行った。そして,昨年度来の全てのデータの分析を踏まえて,研究成果をまとめた。この成果は,学会発表,会誌への投稿を経て,学術雑誌に掲載された。その主要な結果は, (1)問題解決中ではなく,問題解決終了後のふり返り活動によって,解法が進展した事例が見いだされたこと, (2)より発展的な問題の解決中に,前に解決した問題をふり返り,それが解決の進展や問題場面の理解に寄与したという事例が見いだされたこと, (3)ふり返り活動が生起する契機として,「他者による直接的指示」「発展的な状況」に加えて,「見通しと結果の齟齬」「複数の解答や解法の整合性の確認」が想定されることを事例的に明らかにしたこと, という3点であった。 また,ここでの研究成果やこれまでの一連の研究を踏まえ,問題解決的な授業におけるふり返りの指導について検討を行った。そこでは,まず,上記(1)(2)の結果を踏まえ,同構造の一連の問題を解決する場面設定をすること,さらに,上記(3)の結果や問題に対する誤解や誤った表象構成を自ら正していくことの難しさや「ふり返り」活動の再帰的構造を踏まえて指導上の指示や発問を考慮することなどが,指導の方向性及び留意点として指摘された。
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