研究概要 |
本研究は,生徒の物理概念に対する誤認識を把握し,IT機器を効果的に活用して正しい概念に導く実験方法やコンテクストを基盤とした探究学習の指導方法について,地域の高校教員と大学教員が共同で研究会を通じて実践的に検討し,その成果を高校や大学の初年次教育での実践を通して新しい授業プランを開発することを目的としている。本年度は,実験中における生徒の到達度を把握しながら,探究活動を成立させる指導方法について,英国アドバンシング物理の「センサープロジェクト」を参考に検討し,日本の物理授業で活用可能な指導プランを詳細かつ具体的に作成することを目指した。はじめに,実験器材の準備,取り扱い上の注意から指導のポイントおよびタイミング,さらにはそれぞれの理由に至るまで,これまでの各教員の経験をもとに詳細に検討し,可能な限り具体的かつ詳細な指導プランを作成した。続いて,開発したプランを用いて,昨年8月に京都府の高校生18名を対象とした2日間の公開講座を開催した。その際,外部から物理教育関係者を見学者として招き,指導プランの外部評価を実施した。授業は,生徒を各班3名ずつ6班に分け,指導教員は教員研修的意義もふまえ,各1名ずつ計6名の体制で臨んだ。事前と事後に活動に関するアンケート調査および知識テストを行った結果,"(科学)実験"に対する認知度(例えば「実験が成功するかどうかよりも,実験方法の意味を理解することを重視する」など他4項目)が改善され,知識的理解度も増加していることが確認された。一方で,指導方法に教員間の差が大きいことが指摘された。その原因として,事前の打ち合わせ不足による指導方針の共通理解ができていなかったことや生徒の班構成の違いなどが挙げられる。今後,時間的な制約も考慮し,内容・展開のさらなる精選を行っていく必要がある。
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