研究概要 |
4力年計画の3年目にあたる本年度は,昨年度に引き続き,教師のライフステージのうち初心期から中堅期に位置する数名の教師を対象として理科の授業実践の観察とインタビュー調査を実施し,彼らがどのような理科授業を価値ある授業だと考え,どのような理科授業の構想と実践を目指しているのか,さらに実践的指導力の向上にとってどのような課題を抱えているのかなどに関するデータの収集と整理を行った。それに加えて,本年度は,反省的実践の能力の獲得が実践的指導力の向上にとって重要な課題であるとの認識に立ち,これまでに収集・整理されたデータをもとに,理科教師がライフステージの初心期から中堅期に至るまでの間,理科授業に関してどのように反省的実践を展開していくのかに焦点を当て,教職経験と教材経験の観点を踏まえながら分析を行った。その結果,教職4年目のある教師の第5学年「おもりの衝突」の実践(この教師にとって初めての教材経験)において,子どもによる実験結果の発表を踏まえてその後の指導方法を変更し実践した場面や,教職9年目の別の教師の第3学年「植物のからだ」の実践(この教師にとって2度目の教材経験)において,子どものつぶやきや反応を即興的に生かした指導を展開した場面などが認められた。こうした実践の背景にある教師の思考や判断の内容についても,インタビュー調査から把握できた。これらのことから,理科教師が具体的・個別的な問題状況に直面し,反省的実践のうちの「行為における省察」を展開し始めるのは,初心期の終盤から中堅期の初期にかけての間であること,「行為における省察」は教材経験が全くない場合や僅かしかない場合でも実践されうることなどが推察された。
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