研究概要 |
2年目の本年度は,1年目に引き続き保育・授業記録の収集と分析を行い,専門領域の異なる概究者と幼・小・中学校の教員で協議を行った結果,(1)表現活動と用語,(2)学習者間あるいは教師と学習者の関わり合いの内容,(3)発表の場の設定と方法,(4)教師の気づく(見取る)力,(5)学習者の関わり合いへの教師の関与などが,科学教育カリキュラムの連続性を保障する授業の要素として抽出された。このうち「用語」については,中学校3年「力と運動」の授業分析より,「力がはたらき続ける」と言う学習課題の提示が,教師にとっても生徒にとっても解釈しにくいものであり,実験データの解釈や学習者間の交流において戸惑った場面が見られた。小学校4年「もののかさと力」や5年「てこのはたらき」では,「空気の押しかえす力」「おもりが棒をかたむけるはたらき」などの表現がなされており,「力」が主語になる表現はなく,力学的な概念形成において用語と表現が鍵になることがわかった。また,本年度は,授業の導入場面に注目し,教師の発問と応答を分析した。その結果,学習者に提示する具体物(教材)のカリキュラム上の位置づけを教師がどのように把握し,それを学習者に提示する方法に反映させるのかという点や,学習者の予想や発言をこれまでの学びに結び付けようとする教師の応答が科学教育カリキュラムの連続性に影響することが導かれた。このような分析によって,授業モデルや単元モデルの要素を具体化することができたが,観察実験中の活動や実験結果のまとめの場面に関する分析が不十分であり,最終年度はさらに授業事例の分析を行うともに,抽出された要素を分類して授業・学習スタンダードを作成し,その一部を実践することを試みる。
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