研究概要 |
3年目の本年度は,1,2年目に引き続き保育,理科授業記録の収集と分析を行い,昨年度までの研究で明らかにした理科カリキュラムの連続性に影響を及ぼす授業要素について検証した。カリキュラムの実効性に関連する5つの授業要素について,カリキュラム研究,教材研究,授業構想等の観点から考察し,教師の具体的な活動に反映させる方法について検討した結果,言語化の段階を意識した授業展開,体験の共有化における教師の役割と教具の利用,教師の応答力を向上させるための教員養成・教員研修の方策,各教育内容で用いられている用語と表現の整理の必要性を見出すことができた。言語化については,学習者の発達に合わせた「自発的な言語化」→「多様な言語化」→「適切な言語化」という段階に対して,理科学習における言語・表現の種類を対応させ,さらに教師の支援・指導のあり方を図で示した。教師の応答力の向上については,単元構想などの実習を教員養成や教員研修に取り入れ,学習内容問の関連と,関連づけるための要素を図示するような方法が,カリキュラムの連続性を見越した教師の応答力の育成に活用できることを提唱した。また,教科書等に見られる用語・表現が学習内容の系統性に沿って整理されていない現状を指摘し,教科書中の用語・表現と教師と学習者が用いる用語・表現を学習内容ごとに調査する必要があることを示した。さらに本年度は,5つの授業要素の観点を幼稚園の保育にフィードバックし,保育の活動と科学教育の関連及び小学校における学習との違いと関連について考察を行った。当初の目的にあった授業・学習スタンダードの作成まで到達することはできなかったが,理科カリキュラムの連続性を保障するための授業の視点と方法を抽出することができた。これらの観点は,これからの理科授業研究における授業構想や授業分析に応用可能である。
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