研究概要 |
本研究では,「グラフ発見学習」の研究成果を基に児童・生徒のグラフ認知特性を生かした小学校高学年から中学校3年生まで適応可能な理科数学融合カリキュラムの開発を目指し研究を進めている。 平成21年度は,平成20年度までの研究成果である「中学生の理科実験計画時と実験テータ処理時とのクラフ利用に関する比較」の報告と,グラフスキル発達の分岐点である小学校5年生を対象にしてグラフ認知の授業前後の変容調査を行った。調査は,授業前後の質問紙,授業本体のビデオ記録分析から行った。 質問紙調査の結果,横軸に時間,縦軸にそれにともなう変数量の変化をグラフ化する記述としては,太陽の高度と時間,気温の変化と時間などがあったが,割合は低かった。また,連続量としてグラフ化できない変数についての記述も見られた。授業調査は,これまでの研究成果に基づいたグラフ電卓を用いた「グラフ発見学習」を行った。授業対象は本学附属小学校5年生の40名であった。今回のグラフ発見授業では「歩いて作れるグラフを見つける」を課題として与えた。全部で8つのグループに分かれ,60分の授業の中で被験者である児童はグラフ電卓の基本操作を学んだ後,試行錯誤を通して身体の動かし方とその結果として描かれるグラフの形との関係性を探究した。すべての班で事象からフィードバックされた情報に基づくコミットメントが見られた。授業後の質問紙調査は,授業後1ヶ月を経過した後に行った。内容は,グラフ発見学習で気づく静止状態での位置と時間のグラフの解釈を求める質問と,遠ざかる物体が途中で速さを増す場合のグラフの解釈を求める質問とした。 その結果,ほぼすべての児童が授業で行った内容について,正しい解釈し説明することが出来ていた。 平成21年度の研究成果より,理科数学融合カリキュラム開発の骨格について,その妥当性を確かめることが出来た。
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