本研究では、「音声科学」という身近なテーマを通して子どもたちに科学への興味を抱いてもらうことを目的とし、用途別に声道模型教材の開発・改良を行った。 「スライド式3音響管モデル」の声道模型は、単純な構造を活かして教室等での講義用(普及型声道模型)のみならず、科学教室やセミナー等で体験しながら学べる教材(工作型声道模型)として有効である。音源の改良を行うと共に、より工作がしやすい手順を開発し比較・検討した。模型工作を取り入れた教育プログラムを、国立科学博物館での科学教室や日本音響学会主催のサマーセミナーやビギナーズセミナー等にて実践し、その改善を作業効率と音質の面から実証した。 「筒型の声道模型」においても改良を重ねた。1つの試みとして、男性用のみならず女性用モデルを検討。科学館等での体験型展示や教室での説明などに適している声道模型として、ソニー・エクスプローラサイエンスにおける企画展の一部に取り入れられ、異なる喉頭原音と各種声道模型を自由に組み合わせることにより、音源フィルタ理論などを系統的に理解できる展示を実現した。声道形状の長さを検討すると共に、音源(喉頭原音)も複数用意し、ピッチの異なる男性用・女性用の音源や、しわがれ声など異なる声質の音源を組み合わせ可能とした。また、教室等での講義用に広く使える教材として、外形がそのまま内部形状を表わす模型を実現した。今までは外形が円柱であったため、外から見て内部の声道形状が分かるように透明な素材で製作していたが、肉厚が一定の形状設計を行うことでケミカルウッドなど他の素材で実現することが可能となった。触って形状を認識することが可能で、視覚障害者も活用できるバリアフリーの教材となるだけでなく、運搬性、耐久性、製作費用等の面でも改善が図られた。以上のような多くの試みを行うと同時に、その成果を社会に還元している。
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