初等物理学の学習者のためのweb公開e-Learningの開発において、自主学習を促進することを目的として、物理学の知識構造を表現するトピックマップを軸としたe-Learningシステムの開発・運用を行った。トピックマップは、知識の主題を「トピック」とし、トピック同士の「関連」を定義して知識構造のオントロジーを構築する。さらに主題と具体的資料とを結合する「出現」を定義する。これにより、脳での思考と類似する知識表現をコンピュータ上に実現することが可能となる。本研究では、ノルウェーOntopia社のトピックマップ開発ツールを用いて初等物理学の学習内容全般の知識表現を行い、これまで蓄積してきている電子教材などを、開発したトピックマップに統合した。これをもとに、Adobe FlashのActionScript言語と、web-データベース連携システムAdobe Coldfusionとを用いて、実際の公開e-Learningにおいてトピックマップを有向グラフとして可視化し、この可視化トピックマップを軸にして学習を展開できるシステムの開発を行った。これにより、学習者を、教材の1次元的配列に制限された時系列的講座型の学習から解放し、学習者個々の必要性や興味に応じた学習を物理学の知識構造を生かして展開できるようにした。さらに、トピックごとのドリルでの、時間を含む重み付き累積正答率にもとづく分散型反復学習アドバイスを、この可視化トピックマップに色情報を用いて表示した。これにより、知識構造とともに学習履歴にもとづく学習を展開できるようにした。このe-Learningでの自主学習履歴を解析して、トピックマップ導入以前と比較したところ、授業範囲を超えた広範な学習の展開や、知識が関係づけられている一定領域の集中的反復学習などが見られ、時系列的講座型よりも学習範囲や学習方法の顕著な多様化が見いだされた。
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