研究概要 |
(1)伝統的な阿波しじら織の力学的表面的性質を検討した。せん断特性が小さい織物に、凹凸が大きくなった。しじら織は高い摩擦、曲げ、圧縮特性がある。国指定の伝統工芸品としてのしじら織と徳島県伝統特産品としてのしじら織との間に顕著な違いはなかった。 (2)アパレル材料の諸性質について、学士力としての学習効果を得るために、伝統技術を題材とした4つの授業を統合的に組織し実践した。体験的で課題発見を促す染色実験の授業,さらには保温性、通気性の保健衛生的性質,引張り試験、摩耗試験等の物理実験を行った。実験はグループ学習とした。その結果、知識・理解、及び問題発見・解決能力を高める学習効果をあげることができた。天然灰汁発酵建てによる藍染を体験した学生について交流分析を行ったところ、男女学生ともに論理的思考力が高まり、女子学生の場合は創造性も高まる可能性があることが示唆された。 (3)伝統技術をはじめとした地域資源が高等学校でいかに活用されているかを、徳島県下高等学校を対象としてアンケート調査を実施した。藍染は科学教育のための絶好な教材であるにも関わらず、そのような視点で教材に用いている高等学校はなかった。四国大学に対して学生派遣の要望が多かった。博物館をはじめ、青少年等を対象とした科学技術の普及活動についても例を挙げて言及した。 (4)最近,伝統的工芸品の技術を近代化して現代生活に適合した製品を作り出そうという動きや、伝統的工芸品の技術から出発して、全く異なる技術に発展させる動きも目立ってきた。海外の藍染としてハンガリーの事情を紹介した。伝統的工芸品製作の後継者を育成するために、市民に対する普及講座をはじめ、業界によって設立された専門学校や、美術大学等で専門教育が行われていることを述べた。
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