■研究の目的 理工系学生の創造力は、一つの問題を考え続けて「何かに気づく」ことが最初の出発点である。この研究では、学生にオープンエンドの課題を課して「自分で考え」「自分で発見する」体験をさせる。そして、学生の「数学」に対する見方や「考える」という行為自体にどのような変化が起きていくかを調査して、その変容の経緯とそれを引き起こしている要因を明らかにする。 ■研究の意義 本研究では、数学に関する一般的な性質を発見させる課題を継続して与える。学生は、自分で考え発見する喜びを何度も体験することになり、「考える」ことへの抵抗が薄れ、「考えることの楽しさ」を実感するようになることが期待される。それは、数学のみならず他科目での取り組みにも好影響を与えることが期待される。 ■平成20年度までの概要 本研究では、平成20年度までに次のことを行った。 (1)学生の性格や創造性に関して、市販の質問紙を利用して調査を行った。 (2)成績下位の学生でも解答可能なオープンエンドの問題を収集・作成した。 (3)学生に数式処理機能を持つグラフ電卓を貸与し、それを利用して考察させる探求課題を継続的に課した。 (4)学生の、数学に関する興味・関心等を問う質問紙を作成し、同じ内容で継続的に調査を行った。 ■今年度の研究計画 今年度は、上記(3)(4)を繰り返すと同時に、創造性に関する調査をもう一度行い初年度と比較する。また、専門科目からみた学生の創造性について調査し、それらを総合して数学に対する見方や考え方、あるいは「考える」という行為にどのような変化が生じているかを分析する。そして、その変化を引き起こす要因について考察すると同時に、創造性検査で向上が見られた学生について、どのような要因が関与しているかを考察したい。なお、このような数式処理電卓を利用した数学教育の実践について数式処理学会の学会誌「数式処理」に投稿し、受理・掲載された。
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