本年度の研究では第1に、超小型人工衛星の無線データ通信ユニットに搭載するSRLL Ver.2プロトコル用TNCのプロットタイプを開発した。TNCにはUSB通信モジュールを搭載したPIC18F2550マイコンを使用し、CCS-CコンパイラのCDCクラスライブラリを利用して受信ファームウェアを作成した。また、PSoCマイコンで構成されたBell202規格の受信用モデムを復調回路に採用した。開発TNCの性能評価実験を行い、USB通信機能、復調機能、解読機能の各機能がそれぞれ正常かつ実用的に動作することを確かめた。Bell202復調機能をPICマイコンに実装し、ワンチップ化することが今後の課題である。 第2に、超小型人工衛星の送信データを受信し、解読や解析するための通信ソフトウェアの開発を行った。開発環境にはVisual Studio 2008 C#を使用したので動作環境として.Net Framework 2.0以上が必要になる。しかし、配布パッケージのファイルサイズが小さくインストールトラブルが発生しにくい、標準的なWindowsアプリケーションのGUIを備えるなどの利点がある。動作検証の結果、開発した3種類の通信ソフトはそれぞれ設計通りに動作し、超小型人工衛星のデータ受信・解読に使用できることを確かめた。これらのソフトはバイナリデータの受信や解読、地上局(受信装置)の自動運用やネットワーク環境への対応などに適した実践的な機能を備えているが、Windowsアプリケーションとしての基本的なGUIや操作性が統一されていない。これらを統一して実用性と汎用性を向上させた通信ソフトウェアの開発が今後の課題である。
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