本研究は、いわゆる「環境教育政策」を分析の対象として取り上げ、環境教育の政策が具体的に策定され制度化されるプロセスにおいて何があったのか、また制度が作られた後の政策効果や影響として、どのようなものが観察されたか、等を分析し明らかにしたものである。本研究が具体的に分析の対象としたデータは、東アジアに位置するマレーシア国・サバ州政府が、実際に策定を進めてきた「サバ州環境教育政策」の政策プロセスである。参与観察や面接調査、訪問調査を通じて質的データを収集し、いくつかの論点について分析と考察を行うことに成功した。当該年度に行った分析の結果、環境教育の政策形成のプロセスにおいて出現し顕在化した障害や葛藤を、質的データから類型化する作業を行い、環境教育の政策過程に際してはどのような課題に対して配慮するべきか、ということを明らかにすることができた。また、一旦政策が形成された後に出現してきた政策自体の改定を進めたいという企図を分析した結果、政策をめぐるさまざまな意欲、例えば環境教育の実施に際して出現する主管業務を把持することや、実施に際して新たに出現するであろう補助等の獲得への意欲等を見出し、それらが実際に存在していることを明らかにした。これらの研究成果によって、他の自治体等が環境教育の政策形成プロセスを今後展開する際に重要な教訓を提示することができる。というのも、これまで環境教育の政策プロセスを最初から最後まで記述したものが無かったからである。
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