研究概要 |
大学等での講義映像をアーカイブ化し,それをインターネットや衛星経由で配信することで,知の共有や有効活用を推進する動きが顕著になっている.しかしながら,講義映像の撮影に関しては,大学で実施される講義数が多く,また長期間に渡るため撮影のための人的コストが問題となっており,現状では撮影のための人員を配さず,固定設置したカメラ等で撮影していることが多い.このようにして撮影された映像は興味対象を常に的確なショットサイズで捉えているとはいえず,また受講者の質疑応答が活発な講義においてはカメラ制御などの理由により自動撮影自体が困難である.このような課題に対して,音声の到達時間差により受講質問者を含む発話者の位置を特定し,撮影制御を行う研究がすでに他研究者により進められているが,装置の設置や調整等にコストがかかり,また,ポータビリティが低いという問題がある. 本研究では,これらの課題を解決するために,講義時の確実な発話記録や伝達のためにマイクロホンが多用される点に着目し,マイクロホンに赤外線タグを取り付け,それをパン・チルト制御可能な赤外線カメラで検出,追跡し,そのカメラの動きに通常の撮影用カメラを同期させることにより不特定位置に存在する発話者の追跡,撮影を可能とする手法を検討し,実験システムの実装を行った. さらに,発話者の表情やニュアンス等のノンバーバル情報を捕らえられる映像の方が講義映像視聴者の適切な理解を促進すると考えられるため,カメラと発話者の間の距離を検出し,その距離に応じて動的にカメラのズームパラメタを設定して常にミドルショットで発話者を撮影できるようなカメラ制御アルゴリズムを検討,実装し,カメラ制御の応答性などについて評価した.
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