研究概要 |
本研究では,教育CIO(情報戦略統括担当者,chief information officer)としての役割を担ってきたスクールリーダを対象にし,学校経営とICT活用との関連がどのように認識されているかを調査した。また,米国メリーランド州など,海外の先進事例において,CIOがどのように位置づけられ,教育の情報化が教師や管理職,児童生徒にどのように浸透しているかを検討した。 アンケート調査結果により,学校を挙げてICT活用に取り組んできた実績をもっ校長らは,地域や保護者など外部への対応を重視しており,情報公開へも積極的であることがわかった。また,授業以外でもICTを積極的に活用しており,ICT活用により教師の負担を軽減できる業務内容が明確に認識されていることがわかった。我が国の現状は,様々な利用方法を経て,ICTで効果が上がる業務内容が明確になりつつある段階と言える。学校内外の情報の流れを積極的に活用し,学校文化を改革しようとする姿勢や方略が反映されるときに,教育の情報化が推進されることも明らかになった。教育の情報化に成果を上げてきた海外事例の検討により,国または州のレベルで,ICT導入による「学び」の変化を明確に捉えたビジョンが描かれていることが明らかになった。学習者一人一人のニーズに対応した多様な教育方法の実現にICTが活用され,その教育効果に関する分析結果を教育経営や指導方法の改善に利用する体制が重要である。 ICTの統合的・計画的利用による教育経営プログラムでは,ポストとしてのCIOの有無が重要ではなく,CIOに求めるような機能が,国,県,学校,教育委員会,のそれぞれの段階の体制に設定される必要がある。ICT活用による従来のマンパワーを超えた教育サービスの提供,そして知識社会への対応には,理念や目標・教員研修・システム構築・評価が連絡し合う,新たな学校文化の構築が求められる。米国メリーランド州の取組みは,我が国の教育経営プログラムの構築の参考となる一例と言える。
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