研究概要 |
本研究では,視覚障害者の高等教育で利用する数学や情報処理関連教科書などの図を,コンピュータを利用することで触図化を支援するシステムを開発することを目的とする.視覚障害学生の指導にあたっては,健常学生指導のそれと比較して,授業で用いる教材作成のための負担が大きく,視覚障害学生指導の能率を著しく妨げている.教科書にある図の効率的な触図化は,視覚障害学生指導の能率化のみならず,彼らに対して十分な資料を触図として提供できる上で学力向上に貢献でき,その社会的意義は大きいと考えられる. 本研究で開発するシステムの概要は次の通りである.1.図をイメージ・スキャナ等で画像データに変換する.2.画像データからグラフ領域と文字領域を分離する.3.文字領域の文字列をOCR処理により文字認識する.4.文字認識された文字列を自動点字翻訳する.5.視覚障害者が読み易いように点字を適切な場所に自動配置する.6.上記一連の作業を支援するGUIを介して点字プリンタで触図を作成する. 平成19年度では,文字領域抽出,入出力インタフェースの開発,ならびにGUI開発を行った.文字領域抽出では,1.入力画像データをラベル処理し連結成分を発見する,2.各連結成分が内接する矩形領域を同定,3.大きな矩形領域に対応する成分はグラフ成分と判別し除去する,4.残った成分に対して,細線化,線分化,線分密度計算,2値化処理により文字領域を同定する.文字は複数の線分から構成されるという仮定に基づき,線分が密集する領域を文字領域として識別している.点字プリンタにはジェイ・ティー・アール社製ESA721を購入した.ESA721はインタフェースとしてRS-232Cシリアルポートを標準装備しているので,これを利用した.また,GUIにはVisual C++を用いて開発した.
|