本研究では音声認識方式により教員の音声をリアルタイムに字幕変換し、聴覚障害学生に提示する講義保障システムの実現を目的としている。平成20年度の研究成果の概要を以下に述べる。 【1】見やすく、講義内容理解に適した字幕表示方式の検討 音声認識結果を字幕表示する方式として、講義資料画面の下部に字幕を表示する1画面形式と、講義資料とは別に字幕表示端末を設置する2画面表示形式について実験した。その結果、1画面形式の場合には字幕に注意が集中し、講義資料の方に集中できないという意見が健聴学生に多かった。このことから健聴学生と聴覚障害学生が一緒に受講するケースにおいては、聴覚障害学生専用の字幕表示端末を設置する2画面表示形式が望ましいことがわかった。 【2】字幕化精度と内容理解度、および字幕の表示遅れ時間の許容限界 講義内容の理解に必要な字幕精度について5段階評価による内容理解度の実験を行った結果、少なくとも90%以上の字幕化精度が必要であることが明らかになった。また字幕の表示遅れ時間に対する許容限界は、約10秒であることが分かった。このため教員の音声を約10秒以内に字幕化してリアルタイム提示することが聴覚障害学生の内容理解にとって重要である。 【3】ゼミ形式講義やグループ討議における聴覚障害学生への講義支援 教員と聴覚障害学生がゼミ講義やグループ討議する場合の双方向コミュニケーションシステムを構築した。参加者全員が無線LANで結ばれたノートPCを使用してキボード入力により双方向でコミュニケーションをとることができる。10人規模のゼミ講義で本システムの有効性を確認した。
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