平成21年度は、個人認証(筆者識別と顔識別による)と学習の効率化について検討した。 筆者識別については、新局所円弧法(曲率による特徴抽出)を用いた平仮名による個人認証の精度を、類似度の値と他者との差の程度を示すt-値で検討した。その結果、類似度の大きさのみでなく、t-値の大きさも筆者識別に強い影響を示し、筆者識別に適した文字種と適さない文字種とを選定することができた。推奨文字として、「そ」「よ」「わ」「ま」を、逆に避ける文字として、「し」「こ」「い」「り」を示した。次に、顔画像による識別について検討した。顔部品の抽出はOpenCVを用い、各顔部品間の相対距離(10次元ベクトル)を主成分分析(3次元の主成分得点空間への射影)で分類したが、これだけでは高い精度が得られず、精度の向上を目指してSVMとのハイブリッドな識別手法を提案し、比較的安定した識別を実現することができた。 学習の効率化については、Web学習と対面学習とを併用させたブレンディッド学習において、自己モニタリング手法、および習熟度別のWeb教材を活用して学習意欲の維持向上を図ることに焦点をおいて検討した。教材は英検2級と3級の問題を使用し、混合割合によって教材レベルを5段階、および9段階に分けて習熟度別に学習者固有の教材を提供した。間違った問題は次週までに自宅でWeb学習するように指示し、全て正答するまでのトライ回数と達成の有無を記録した。正答割合によるメッセージ表示によって自己の状況を把握し、学習意欲を持ち続けることが可能となる。ただし、上級レベルへのステップアップのハードルを高く(80%以上)設定すると効率が上がらないこと、およびレベルは細かく設定する必要があることが明らかになった。
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