研究概要 |
日本国内での日常の相互作用において,育まれる機会の少ない外国語としての英語の習得を促進するという観点から,授業外での英語を利用するタスク活動を提供する場としての,WBT英語自律学習支援システム"WebIts"(ウェビッツ)は,21世紀に実社会で活躍する大学生の英語運用力養成に大きく貢献している。ことに日本人学生が,いまだ得意意識を持ち難い状況にある聞取りカを補強する,音読やシャドーイング(SH)指導に関わる,言語処理プロセス研究を基盤とした実証研究による指導法の検証や,その理論に裏づけされた効果を促す教材の提供は,他に比類のないものである。システムの面からは,コンテンツの再構築の困難性や高額な教材作成コストの壁を可能な限り破るLinuxベースの汎用性の高いシステムを継続し更新しており,この点でも既存のシステムとは弁別されるものである。 具体的には,2007年度延べ600名余の参加者(私立大学学生)を得て,英語の読解処理の効率化に関わる音読、SH指導の影響を調査観察し,試験、質問紙、データ分析を行い,初級レベルと中級レベル学習者へもたらされた各特徴を見出した。2006年度パイロットスタディで実施した音声利用指導法での調査で,明確にはわからなかった,復唱かぶせありのSH指導とかぶせなしの音読指導の読解への影響をより鮮明に切り分けようと,当時用いた試験内容を項目応答反応により分析し,新たに本年度調査試験を実施した。その結果,前期では,WBT利用による高頻度の繰り返し練習を伴う,負荷の高いSH(かぶせあり)練習が中級群に,一方,初級群には,高頻度の繰り返しを伴うが負荷の低い音読(かぶせなし)練習が相応しいとの示唆が得られた。しかし,後期に入ると他の要因も現れ,さらに精緻な実証べースの継続的実施が必要であることが必死となった。結果を受け,新教材の開発も推進中である。
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