本年度は、特に継続的に精緻な実証ベース研究が必要となったシャドーイング(SH)指導に関する調査に焦点を当てた。07年度データに基づき音読・SH指導効果をさらに効率化するため、内容を精査して新規に作成した教材コンテンツを、既開発のWBT英語自律学習支援システム“WebIts"へ投入し、教室条件(教室設備WBTの有無)・英語運用力レベル別(中級・初級)・指導期間別(半期・通年)の分析を行った。さらに、iPodを利用し、9名の参加者による個人ペースでのSHへの取組を観察し、SH練習のどのような側面が音声知覚や聴解・読解への影響を与えるかの質的な分析も行った。WBT環境でのSH指導の効果は随所で有意であった。 また、「教室外での生活感覚での学習を効果的に織り込む支援システムの構築」として、SH練習により培ったスキルを実戦感覚で試すことのできるSNS(Social Network Service)による教材を作成し、その影響を調査した。本年度は日常に使用する言語特徴と専門分野で使用する言語特徴をそれぞれの現場から切り取った内容を投入した。 本研究は、以下の2点において、日本でのEFL指導に大きく貢献している。まず、データ分析に基づく学習者の実態に即して、コンテンツを即座に修正したり、新規の社会的要求(SNS)にも応じた教材を投入したりなど、再構築の融通性が高い自律学習支援システムの提供により、日常生活での目的言語使用が不足する学習環境の補完を実現している。次に、神経言語学の観点から、言語のボトムアップ処理の効率化をより効果的に引き出す教材を作成し、指導法にも反映させた。現在、さらに新規教材も開発中であり、本年度はこれらの結果を国内学会に留めず、国際学会において、海外でのESL研究者へも広く訴え、WBT活用の学習環境と言語処理の効率化促進の関係性を示唆した。
|