研究概要 |
中国語の有気音の発話は、日本人に難しいとされており、正しい発話の基準としてVOTの長さが広く受け入れられて来た。VOTは閉鎖された声道の破裂から声帯振動開始までの時間間隔である。これまで、発話中のVOTが長ければ,有気音に聞こえ,VOTが短ければ,無気音に聞こえると言われていたが,ここではVOTが何msであれば正確な有気音に聞こえるか調査する。前年度に続いて日本人学生の発話を聴取採録し,中国語話者のVOTと日本語話者のVOTを分析しながら,その長さを測定した。学生らの発話を中国人に聞かせて学生のVOTの長さと発話評価の関係を調べた。正確な有気音のパターンを求め,発話の新しい評価基準を確立した。しかし、VOTの長さは目視により求めた。 20年度に購入したMATLABソフトやパソコン用部品,参考書などを用いて,まず、マイクロフォンから学生の発話をパソコンに取り込んで,発話の入力と記録およびデータベース作成のためのプログラムを作成した。次に確立した新たな発話評価基準により、中国語有気音の発話の正確さを決める要素の一つはVOTの長さであることを確かめた。そこで、本年度はVOTを自動的に測定するためのソフトウエアの開発を試みた。すなわち、学生の発話の音声信号をマイクロフォンを通してパソコンに取り込み,MATLAB言語を用いて、VOTの自動測定プログラミグを試みた。具体的には、バンド幅が200Hzで、32チャンネルのフィルタバンクを構成した。測定する音声の最高周波数は6350Hzである。この帯域毎のパワーを測定して時系列で出力する。次にこの出力結果をもとにVOTの開始点(破裂点)とVOTの終了点(声帯振動が始まる前の点)を自動的に検出し,VOTの長さを自動計算した。その結果は目視の結果と比較してよく一致しており、VOTの自動測定に実用可能であるとの結論を得た。次年度はさらに発話のパワーの自動測定のプログラムの開発を試み、信頼性の高い、有気音の自動評価プログラムの開発に取り組む予定である。
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