研究概要 |
本年度は実験準備として瞬目波形取得システムを構築し,次いで,注意の度合いと瞬目波形との関係を把握するための予備的実験を遂行した。得られた成果は次の通りである. 1.瞬目波形計測・分析システムの構築 高速度撮影型ビデオカメラと専用画像入力ボードを組み合わせて,刺激同期入力型の瞬目波形計測システムを構築した.本システムは,刺激呈示後約3秒間内の眼部映像を120frame/sのフレームレートで取得することができる.また,得られた眼部映像から上眼瞼と眼球の境界線を抽出するための正規化相互相関手法に基づく瞬目波形抽出手法を考案・設計した.本手法は来年度に実装する予定である. 2.注意の度合いと瞬目波形の関係についての分析 注意の度合いを三段階に変化させるため,オフ画面観察条件(オフ状態のモニタの観察),数字観察条件(一桁数字の観察),数字加算条件(特定色で表示された数字の加算)の3種類の実験条件を設定した.各数字は7s間隔で100ms間瞬間呈示した.オフ画面観察条件は3分間,数字観察・数字加算条件は1セット60sの試行を4セット課した.被験者は5名であった.以下,瞬目波形の抽出が完了している1名の被験者から得られた知見を紹介する.瞬目波形の形状パラメータとして,振幅(瞬目開始から波形のピーク位置までの高さ),持続時間(開始から終了までの経過時間),閉瞼速度(振幅/閉瞼時間),開瞼速度(振幅/開瞼時間)に着目した.分析の結果,注意の度合いが他の観察条件よりも高い数字加算条件では振幅は小さくなり,持続時間は延長し,さらに,閉瞼速度と開瞼速度は共に遅くなることが示された.これより,注意の度合いが瞬目波形の形状パラメータに影響を及ぼすことが確認された.なお,注意の度合いと関係の深い形状パラメータの絞り込みについては次年度において考察する計画である.
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