平成19年度において、イギリスの帝国戦争博物館の分館において戦争直後の日本の研究施設の調査報告を発見したが、番号の配列から他の報告の存在が予想された。平成20年度においてアメリカのスミソニアン博物館に問い合わせをしたが、そこにはなく、オハイオの空軍施設にある可能性が示唆された。継続して調査していく必要が残された。また平成20年度においては、航空研究所における空気力学研究の歴史を追う論文の作成に向けて、谷一郎の層流翼の発明などをめぐり関係する資料を調査してそのプロセスを検討した。そのために谷自身の研究回顧を見つけて参照するとともに、非売品である谷一郎の追悼文集『一期一会』などを入手し参照することで、彼の研究開発プロセスのさまざまな側面を明らかにすることができた。論文作成にあたって、海外の研究者からいくつかの助言を受けることができた。すなわち、谷が当時海外の情報をどの程度得ていたか、また境界層と層流翼を研究開発していくきっかけは何であったのか、そして谷はどうして研究成果を学術雑誌に公表したのかといった質問である。これらに対して、上記の研究回顧と追悼文集を参照することで、回答することができた。海外の情報の入手状況に関しては、追悼文の一つにおいて、重要な時期にアメリカの航空関係の雑誌が閲覧されていたことが言及されており、スミソニアンの航空博物館の研究員の方からアドバイスを頂き、完全に特定はできないでいるが、候補となる雑誌記事を探し出すことができた。これらの調査結果を元に、論文を完成させつつあるが、その出版は平成21年度以降になる予定である。また、平成21年度から3年計画で開始するプロジェクトと組み合わせることで、空気力学史の著書の出版を計画している。
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