1.実物資料:(i)枡:昨年に続いて江戸時代の公定枡である京枡、江戸枡各1升を実測した。さらに、多くの地方枡を実測した。(1)京枡:昨年同様に、京枡の基準枡である「御本枡」の実測結果の誤差の範囲内で一致する。(2)江戸枡:口広(縦、横の内幅)および深さの分布幅は共に「御本枡」と較べて非常に大きいが、容積は「御本枡」の平均値より小さい。これは当時枡製作に使われたと考えられる物差しの精度が江戸枡では劣っていたため、実測値の分布幅が大きくでたが、容積を御本枡に近づけようとして、深さを調節したため容積が小さくでたと考えられる。(3)地方枡:殆どの地方枡は「御本枡」に合わせて作られていた。紀州枡は「御本枡」と較べて特殊な枡であったが、容積は「御本枡」の実測値と誤差の範囲内で一致していた。(ii)念佛尺(鯨尺):今年度1本だけ実測した。念佛尺(鯨尺)については今までの研究では2グループあることが指摘されていたが、今回の実測結果によってこの2グループの内1つが明治に作られた念佛尺である可能性が強くなってきた。(iii)竹 尺の熱による変形測定:その結果、長さについて、竹尺に含まれる水分の影響が熱膨張よりはるかに大きいという新知見を得た。2.ポルトガル・スペイン・ドイツにおける度量衡に関する歴史的調査:ポルトガル・スペインでは計量博物館および計量研究所を訪問し、ドイツではミュンヘンのドイツ博物館、ブラウンシュバイクの物理工学研究所の図書館などで文書を調査し、メートル法以前の長さの単位およびメートル法導入について新知見を得た。また、織田、豊臣時代にポルトガルから日本へ与えた影響について新知見を得た。
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