平成19年度は、オーラル・ヒストリーと史料の所在調査・収集を行い、得られた情報を整理した。 (1) オーラル・ヒストリー 喜多源逸および京都学派の関係者にインタビューして情報収集を行った。面談者は次の通り:梶山茂、喜多一郎(喜多源逸の親類)、小林文夫、近土隆(2回)、清水剛夫、鶴田禎二(2回)、福井友栄(福井謙一夫人)、吉田善一、米澤貞次郎。インタビューはデジタル録音し、それらをペーパーに起こした。 (2) 史料の所在調査とその収集 京都大学文書館、理化学研究所記念史料室、同志社女子大学史料室、成城学園教育研究所等で関連する一次史料の所在を確認し、必要な史料を複写した。とくに京都大学文書館では、学科新設、講座新設、人事等に関する多くの貴重な学内記録が見つかった。また、関連刊行二次資料(本・論文)を収集した。 年度末の総括として「喜多源逸と京都学派の研究」と題する講演会・ワークショップを開催し、参加いただいた外部の研究者の批判と助言を得た。 本年度の調査から、喜多源逸の生い立ち、人物像、学問観;喜多家の家系;京都帝国大学工学部工業化学科における研究者・教育者・組織者としての喜多の活動;理化学研究所との関係;弟子の櫻田一郎、児玉信次郎、小田良平、堀尾正雄、李升基、福井謙一らの研究と、喜多から受けた影響;工業化学講座の系統;学科新設の経緯;喜多と京都学派が推進した合成石油、合成繊維、合成ゴムの国策的科学研究プロジェクトの意味;日本化学繊維研究所、京都帝大附置化学研究所、日本合成繊維研究協会における喜多の役割と京都学派の配置;浪速大学学長時代の状況等をほぼ明らかにした。
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