本年度は国外では、米国国立公文書館および米国議会図書館、英国図書館、科学博物館それに帝国戦争博物館(いずれもロンドン)において資材調査および収集を行った。 国内では、国会図書館その他で研究分担当の田中美和氏が精力的に工作機械・金型関係の資材収集を行った。 国立公文書館ではIWG(http://www.archives.gov/iwg/about/index.html)が2006年度末に作成した日本軍の資料目録に収集されている資料の再確認を行った。また、議会図書館においてはIWG資料からもれているものの調査を行った。IWGが整理した資料は、大部分が生物兵器開発関係の資料であり、それ以外の化学兵器や物理学関係のものは少ない。議会図書館にも日本軍の生物兵器関係の資料もあるが、むしろ化学兵器や物理学関係の資料に重要なものが多いと判断できる。 英国図書館においてペニシリン関係の資料調査を行い、科学博物館および戦争博物館において第2次世界大戦中の英国とドイツの科学技術関係資料の調査を実施した。たまたま戦争博物館では大2次大戦中の子供たちの生活について展示を行っていたが、戦争当時の子供用の毒ガスマスクや毒ガスに注意を促すポースターなどが展示されていた。当時、毒ガスへの備えは日本でも啓蒙書などで積極的に説かれたが、第1次世界大戦で実際に経験したためか、英国のほうがより徹底していたように考えられる。 第2次世界大戦中の日本および欧米各国の科学技術の研究開発を調べ、分析を続けてきたひとつの成果として、(軍事)研究を円滑に進める上で「情報操作(世論作り)」という観点のいっそうの重要性に気付かされた。その一端を「科学技術と戦争」(「科学」77巻8号、2007年)として発表した。
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