研究概要 |
1. 白滝産黒曜石石材の地質学的及び岩石学的特性 白滝産黒曜石は考古学的な重要性がきわめて大きいが, 白滝産黒曜石の産状や規模・年代, 層序学的な位置は不明であった。地質調査及び岩石分析の結果, 以下の新たな知見を得た。(1)白滝地域は鮮新世末期に珪長質マグマが大規摸に火砕流として噴出し幌加湧別カルデラを形成した噴出中心であった, (2)無斑晶質流紋岩マグマがカルデラ内で活動し, 大量の火砕物(黒曜石破片を含む)を堆積させた後, 溶岩噴火に移行し(220万年前, K-Ar年代), 黒曜石層を溶岩外皮に含む流紋岩溶岩・ドーム群が形成された, (3)これらの溶岩・ドーム群の黒曜石は, 全岩化学組成では2種類に分けられ(赤石山系と十勝石沢系), EPMAによる黒曜石ガラスの化学組成からはさらに細分され, 全部で4グループに識別できた(赤石山系A(山頂部溶岩)・B(八号沢や球顆沢露頭), 十勝石沢系A(あじさいの滝やIK露頭)・B(十勝石沢溶岩等), (4)黒曜石を含む流紋岩溶岩の内部構造をオレゴン州Newberry火山の新しい黒曜石溶岩と比較して明らかにした。 2. 北海道内遺跡出土黒曜石の原産地特定 旭川市内8遺跡(旧石器時代〜続縄文時代), 常呂川河口遺跡(縄文・続縄文時代), 上士別遺跡(縄文時代), 利尻富士役場遺跡(続縄文時代)の黒曜石石器をEPMAによって元素組成分析し, 原産地同定を行った。白滝産の4グループの黒曜石が旧石器時代からすでに開発され使われていたことがわかった。上士別遺跡のような内陸地においても地元の名寄産黒曜石よりも圧倒的に白滝産のものが使われていたことは天塩川の水路を使って黒曜石の移動がなされていた可能性を示す。利尻島へも海を渡って白滝や置戸産黒曜石が流通していた。今後さらに多数の遺跡から黒曜石石器を分析してより細かい流通・移動機構を解明する計画である。
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