研究課題/領域番号 |
19500870
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研究機関 | 国際基督教大学 |
研究代表者 |
堀内 晶子 国際基督教大学, 教養学部, 上級准教授 (60052289)
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研究分担者 |
宮田 佳樹 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 研究員 (70413896)
遠部 慎 北海道大学, 埋蔵文化財調査室, 特定専門職員 (50450151)
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キーワード | 製塩土器 / 化学分析 / 脂質 / 土器 / ステロール / 塩 |
研究概要 |
塩は人間の生活に欠かすことのできない重要なミネラルである。日本では、縄文時代から土器を使って海水を濃縮し塩を取り出す手法が用いられているが、塩(主成分は塩化ナトリウム)は水に良く溶けるため、製塩土器には塩の生産過程を反映する化学物質は残らないと考えられてきた。しかし、我々は平成19年度に、海水を繰り返し濃縮する「素水法」で塩を析出させた実験製塩土器から海水中に微量存在するステロール類が濃縮・残存し、特に褐色藻に多く含まれているフコステロールの存在が海水由来を示唆する事、また平成20年度には同じ実験製塩土器を使って、塩化ナトリウムの成分である塩化物イオンの一部が水には溶け出さない状態で胎土内に残存し、フッ化アンモニウム水溶液で抽出できる事を示してきた。 本年度は藻を使って予め塩分を濃縮させた鹹水を使った、より高効率の「藻塩法」で製塩した実験製塩土器の胎土内に吸着・残存するステロール類を分析し、素水法実験製塩土器と比較することで、これらの異なった製塩手法がステロール分析から識別できるかを検討した。塩の生産方法は生産量、人口、流通などとも深く関連しているため、製塩技術の同定は古代のダイナミックな人間活動を知る上で貴重な資料となるからである。 その結果、藻塩法実験製塩土器から、褐色藻に多く含まれているフコステロール以外にも全ステロール類の約25%をしめる多量のブラシカステロールを検出した。ブラシカステロールは珪藻に特異的な化学物質で素水法製塩土器からは検出されていない。珪藻は海藻に付着生息する為、多量のブラシカステロールの存在は海藻を使用したことを強く示唆している。従って、製塩土器に残存するステロール類、特にフコステロールやブラシカステロール等、海藻や珪藻由来のステロール類を分析する事で、製塩土器か否か、また素水法と藻塩法の製塩手法が識別できると考えられる。
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