本年度は、4年計画の第4年目(最終年度)として、I:これまでに引き続きいくつかの個々の建造物(建築文化財)の外観塗装および彩色材料の性質や色相、年代的塗装材料の変遷などに関する基礎的調査を行うとともに、そのまとめを行った。II:特に、今年度はこれまで行ってきた歴史的な木造建造物のベンガラ塗装に関する基礎的調査の成果を纏めて一冊の報告書を作成した。主な研究成果は以下の通りである。 I:平成22年度は、法勝寺塔跡出土の軒平瓦付着赤色顔料、銀閣寺観音殿(国宝)、大元神社本殿(重文)、厳島神社社殿(国宝)部材、瑞巌寺本堂(国宝)、都久夫須麻神社本殿(国宝)、広島東照宮唐門(県指定文化財)に関する調査とまとめを行った。 II:研究調査報告書『歴史的な木造建造物のベンガラ塗装に関する基礎的調査-基礎編-』170p.を作成した。その内容は、(1)赤土ベンガラ・・文献史料に登場する「赤土」に関する基礎的調査、(2)丹土ベンガラ・・いわゆる「丹土」と称されるベンガラに関する基礎的調査、(3)赤泥ベンガラ・・豊後国風土記に記された「赤湯泉(あかゆ)」の赤泥伏沈殿物に関する基礎的調査、(4)パイプ状ベンガラ・・パイプ状ベンガラの生産と使用に関する基礎的調査、(5)鉄丹ベンガラ・・「鉄丹」と称される近世における人造ベンガラ製法と生産関連出土資料に関する調査、(6)ローハベンガラ・・「礬紅」もしくは「弁柄」と称される近世人造ベンガラに関する基礎的調査、(7)現代のベンガラ・・塗装修理材料としてのベンガラ顔料の再評価に関する基礎的調査、(8)結論(本研究のまとめ)、(9)附章:英文要旨、である。
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