文化財科学の分野でも紙資料を主に文化財防災の一環として真空凍結乾燥法の利用が進んできている。しかしその実際は、埋蔵文化財の保存処理法として一般化している真空凍結乾燥機を使っての修復で、歴史資料のための装置は皆無といえる。被災し救済を要する文化財は、近現代歴史資料が数多くある。本研究で開発した簡便な真空凍結乾燥装置を使い、劣化した古文書資料で試験を実施した。保存科学での培われた経験ある真空凍結乾燥法を被災資料に利用するには情報が少なく、今年度本研究では、歴史資料におけるデータの蓄積と、簡便な装置での可否の確認を試験した。試料は金沢修復工房の用意した古文書を使うので、装置を金沢市まで搬送し現地で組み立て試験をした。試験計画では、2週間の試験予定であったが若干の問題点も明らかになり、予備凍結から乾燥終了まで20日程度要しか。試験は、固着の乖離等良好な結果が得られた。問題点は、装置のトラップの容量が少ないことが判明した。そのためにトラップ自体が短時間で凍結し、真空乾燥のための脱気ができなかった。試験終了後直ちに容量の多いトラップに交換した。試験では、装置を奈良県と石川県の往復に自家用車で移送し、組立て解体も簡単に行えたことは、災害に対応できるように簡便な装置としたことの確認となった。今後、文化財の危機管理での防災計画に反映できる可能性を見出した。
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