昨年度、金沢で実施した古文書での真空凍結乾燥試験について、当該担当者に参集いただき、成果と課題を総括した。被災等で固着した頁については、一定の成果をみたが簡便な装置での運用には相当程度の時間を要することから、実際の被災現場での活用には、なお、装置や方法の改良が必要であろうとの結論に至った。 今年度は、写真資料の応用を試みた。特にネガフィルムではなく紙焼き資料の被災に対応すべく、被災資料のサンプルを作成した。カラーチャートを撮影したカラー・白黒写真プリントを用意し、それぞれ1枚のみ・ポケットアルバムに差し込んだもの・フエルアルバムに挟んだもの・5枚重ねたものを、川の水、水道水、池の水、出土木材保管水、純水の溶液に漬け込んだ。 各資料の経時変化を確認し、変褪色や固着、汚損等の記録をとり、本科研で作製した可搬型の真空凍結乾燥装置で復元試験を行った。 試験結果の総括は現在も継続しているが、写真資料の被災においてその救済は、温湿度の環境に時間の制約が及ぶことがわかった。従前より言われている48時間までというマニュアルは目安としては有効であるが、被災環境の確認が重要であろう。 真空凍結乾燥の利用については、固着の展開には有効であるが、プリント表面の画像面が水により動いているものには画像の復元は不可能である。 文化財の危機管理として防災計画に真空凍結乾燥法の利用を配することの必要性は確認できた。
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