古代ガラス・セラミックスの材質調査から、当時の流通・技術伝播や分配機構を明らかにし、アジア全体での産地の変遷と、日本国内での材質の変遷を併せて考察していくことにより、当時の産業・技術史的な流れを解明することを目的としている。 今年度までに材質調査を実施した調査研究資料約5250点について、化学組成および色調、形状などの観察・分析結果を基にして資料データの蓄積を進め、考古学的、産業・技術史的な知見について考察をおこなった。分析はすべて非破壊分析であるため、資料によっては値にばらつきが認められるものの、非破壊分析ではあっても、ある程度の群を形成することが可能であった。そこで着色材料である遷移金属、特にコバルト、マンガン、銅、鉛については、その特徴について資料群の時期との相関に関する知見を得ることができた。AR法では放射線量を数量化しカリウム含有量の定量化を目指したが、標準資料による実験では測定条件ごとに可能ではあったものの、非破壊分析による考古資料の場合では、形状および表面付着土壌などによる影響が大きく、資料がIPと接する面積については、ある程度の規格化が必要となるなどの課題が残った。しかしAR法を用いた迅速なアルカリガラスに関する分類については、1遺跡から出土したガラス約1557点中に12点のみ含まれていたカリガラスの存在を明らかにすることができたことなど従来と同様に有意義な成果を得ることができた。資料群、遺跡群、および地域的な特性を明確にし、材質の変遷などに関する知見を得ることができたと考えている。
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