研究概要 |
境田清隆は前年度に引続き, 仙台市の都心にある宮城県本庁舎とその周辺で, 4月〜7月に観測を実施し, 海風吹走時に絞って高層建築物が海風に伴う冷気を地上に降下させ, 都心の気温低下を引き起こしていること事例を収集した. その結果, 海風による冷却効果は夏季よりも春季に顕著であり, 都心においては海岸からほぼ等距離にある郊外や低層住宅地よりもむしろ海風による冷却効果が大きいことを明らかにした. その結果は日本地理学会春季大会シンポジウムで報告した. 榊原保志も前年度に引続き, 山間の傾斜地に隣接する長野市内に, 気温データロガーを10箇所, ウェザーステーションを3箇所, 風速計を5箇所設置し, 観測を実施した. その結果, 長野駅北西にある裾花川にそって山風が進入し, 山風が進入する範囲は駅西側の市街地に限定されていたが, 山風の存在が市街地の気温分布に影響を与えていることがわかった. その結果は長野地方気象台の研究発表会で報告した. 高橋口出男は東京を中心とした風系や気温分布と強雨頻度の解析を行い, (1) 夏季の深夜〜早朝における陸風と都市ヒートアイランドとの相互作用, (2) 東京都区部の強雨発現に対する地表面粗度の影響プロセス, (3) 地上風の発散量に基づく局地循環構造の日変化について提示した. その結果は気象学会や日本地理学会で報告した. 以上の観測・解析結果を持ち寄り, 海風と山風のヒートアイランドに及ぼす影響の差異について, また巨大都市東京への応用の可能性について議論した. この課題は日本地理学会の都市気候環境研究グループの中で引続き検討される.
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